-ぼや騒ぎ!なんで俺だけがこんな目に・・・

 その店ではとんこつラーメンのあっさりとこってりの2種類を出していたんですが、こってりのスープが完成して、それを火にかけっぱなしにして、帰ってしまったんです。

 疲れていたので寝ていたら、警備会社から携帯に電話があって、「店がボヤになっている」と言われました。すぐに服着て、車を飛ばしたら、店から煙が出てて、扉を開けました。すると、中では警備会社の人が対応してくれていたので、ものすごく感謝しました。

 ボヤで厨房は真っ黒焦げで、ダクトも溶けたんですが、気づいてもらったのが早かったので、今思うとそれだけで済んでよかったです。

 ただ、その時は「なんで俺だけこんな苦労せなあかんねん、お金だして、しんどいおもいして・・・」ってポジティブ人間がくじけかけたんですね。

 ただ、そんなこといっても始まらないので、どうせ考えるなら掃除しながらにしようと鍋を洗って、客席を拭いて、アルバイトにも手伝ってもらったら、何とかオープンに間に合ったんですね。

 ただ、こってりのスープがなくなって、あっさりしかなかったので、お客さん1人1人に謝りました。

-多店舗展開で赤字。従業員の給料が払えず、消費者金融に駆け込む

 問題を乗り切れたので、「何でもやったらできる」と思いこんじゃって、一気に5店を展開したら大失敗。

 人が育たないし、遅刻して営業時間に開けないし、お金の管理はずさんだし、勝手に早く終わるしと散々でした。

 その頃の僕はというと、新たな味を求めて全国で食べ歩きを始めていました。

 その結果、売上は1億5,000万あったんですが、出費は1億7,000万だったんです。

 だから、従業員にも支払う給料がなくて、かき集めても80万足らなくて、その頃は相談できる銀行もなかったので、消費者金融に手を出しました。

 従業員の給料だけは遅れることは自分では許せなかったので。

-思いが吹っ切れた相談

 その後、お世話になっていた方に相談しにいったんですが、現状について何も言えなかったんですね。で、ごちそうしてもらって、ご飯を食べ終わった時にその方が「お前、悩んでるやろ、経営者が悩むのはお金か人かどっちかしか悩まない。どっちや」って言われました。

 「・・・お金です」

 「そうか、それやったら、今からお前が満足するくらいに金策であたって、あかん店を閉めて、自分が走り回ってみて、それでもあかんかったら、俺んとこに来い。今お前が売り上げている店と同じくらいの店をお前にやる」って言っていただけました。

 その時に悩んでいた霧が晴れたように、「あかん俺にもこんなに思ってくれる人がおったんやって」って人の大事さが身に染みて。その頃から泥にまみれることが何も恥ずかしくなくなりました。見栄とかプライドとか関係なく、全力でやるようになりました。